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シリーズ ハラスメント防止対策2
今回はアンコンシャスバイアスの中の【生存者バイアス】についてお話しします。
アンコンシャスバイアスとは誰の中にもある無意識の思い込み・偏見をいいます。
【生存者バイアス】とは
パワーハラスメントなどの背景になりやすい
ある状況で生き残った(勝ち残った)人だけが抱きやすいバイアス(決めつけ・思い込み)をいいます。
たとえば、
●幼い頃から勉強を強いられ厳しい受験戦争を勝ち残った。という経験があると、それが自分の価値基準となり、そうでない人(勉強をしない人、受験に失敗した人など)に対して『遊んでばかりいて、なんでやらない、だからダメなんだ』と見下す、蔑視する、などの行為は「ハラスメント」になります。親がよく子どもにやるハラスメントですね。
●管理職のケース 部下に『私は休みも取らず、徹夜までして努力してこの地位についた。昇ってきたんだ。だからお前もやればできる!お前はたるんでいる。怠けているとしか見えないぞ!』
はいこれ、パワーハラスメントです。
一見、励ましているように見えてもちがいます!自分を持ち上げるために他者を見下しています。言葉の端々に決めつけている言い方になっていますよね。
このように生き残った勝ち残ったことがすべてとなり、自分と異なる価値観を認めようとしない、そればかりか相手を否定する、見下す、これは人間の人権を無視している状態です。もっとも人として卑劣な態度になります。
※注意していただきたいのは、勝ち残ったから悪いのではないこと。ここポイントです。
問題は、勝ち残ったことを社会の価値基準にしてしまうことです。
それだけが正当だ、正解だ、と思い込んでしまう、決めつけることが問題なのです!
自分がそうしてできたから他の人にもそうすればいいんだ、そうやればできるんだ!と決めつけてしまう。
そして、やらないと、できないと、部下や子どもを侮辱する。罵倒する。
とんでもない人権侵害です。
結果だけを見て人事評価することは以ての外。評価によって差別する。異動させる。左遷なんて言う言葉があるように上司が身勝手な価値観で同じやり方を押し付ける、できないと『ダメだ』『使えない』と判断し他部署へ異動を命じる。またはさらに嫌がらせを重ね追い込ませる。それによってうつ病になるケースもあります。
生存者バイアスによる影響は決して良いものとは言えません。
企業の生産性を下げてしまうのです。ある人にハラスメントをおこなうことで周囲の雰囲気は悪くなります。人が叱責されているのをみて他の人も落ち込みます。負の感情をもらってしまうのです。またよくない意味のミラーリング(非言語の部分で真似る)やモデリング(模倣する)となり、ハラスメントが『やってもいいんだ』と誤解され増えることがあります。会社の雰囲気は悪くなり、社員同士も揉め事が増え、士気が下がり生産性も下がるのです。これはもう明確です。
ただ行為者(パワハラする人)にも訳がある!
行為者は無意識にやったり言ったりしてしまうのですが、実はその人も幼少期に親からされていた、というケースがよく見られます。しかし親から同じことをされても、連鎖させてしまう人とそうでない人がいます。
連鎖させてしまうケースでは、生まれ持つ気質に「怖さに敏感=臆病」が潜んでいることがあります。この「恐れ」の感情が強いと、一方的に親(養育者)が言うことに逆らえないのです。実はこの連鎖なんだと臨床をしていてわかりました。
子どものうちは本能で「生きる」生命を維持することが組み込まれています。親(養育者)に逆らって衣食住を失ったら生きていけません。食べる飲む、寝る、衛生、安全、これらが与えられないと死んでしまうことが本能でわかっていますから自我が芽生えて反抗したい気持ちがあっても「恐れ」の強い子どもは言い出すこともできずに我慢してしまうケースがあります。
しかし、我慢とは気持ちの上では納得していないのですから潜在意識(無意識)の中に深く刻まれていきます。被害者の意識です。「親の言うことを聞かされた」「勉強をやらされた」「怒られた」「怒鳴られた」「~~された」というのは受け身、被害者になったと感じているのです。
そして、被害者はやがて加害者(行為者)になることがあります。すべてがそういうわけではありませんが、特に恐れの感情が強いケースでは、無意識にどこかで復讐を狙っているようになります。復讐はその相手ではない相手に向けられます。
それが、自分より弱い立場のものを見たときに発動します。連鎖は避けたいです。
●そうならないケースというのは、比較的恐れを感じにくい気質をもっていて、親にも上の立場の人にも自分の意見を言ったり、思ったことを行動に移したりします。性格は遺伝による気質と育っていく間の環境でつくられます。気質は簡単には数値化できないので見えにくいのです。近い将来は血液検査か細胞採取などで生まれ持つ気質が簡単にわかるようになると幼少期から予防できるようになると思います。
みんな同じではない!!同じでなくていいんです!
今もこれからも発展していく企業、継続していく企業とは、すべての人の人権と多様性を尊重している企業です。
パワハラの行為者を大人になってから教育するにはマンツーマンの手厚い寄り添いが必要です。
行為者の過去に寄り添って、行為者の人格を認めながらも自分とちがう人間を許容する力を養っていくことです。
行為者に伝えたいこと
激しい競争の中で勝ち残ったり生き残ったりできたことは素晴らしいことです。その実績をもって、弱い立場に置かれている人たちを守り助ける勇気をもってください。謙虚になってください。生まれ持つ気質は選べないのです。どういう気質で生まれてくるかは誰もわかりません。
たとえば、家や土地を生まれながらにして持っている人もいます。しかし、誰でもそうではありません。家も土地もない財産も預金もないケースもたくさんあります。それは決して負けではありません。人生のスタートからの不公平をみんなの力で公平な社会をつくりましょう。
勝ち負けではなく競争ではなく、誰もが幸せに平和に生きていける社会にしましょう。
競争から共創へ 共存へ 協働へ
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